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Taku Tomizawa
2011-2017
Universe Exhibition

Taku
Tomizawa

富澤タク(グループ魂/NUMBER THE.)」個展

2011-2017
Universe
Exhibition

Comments from 奈良美智(美術家)

絵の具を付けた筆は、小さな画面を行き来して、ゆっくりと深みのある色が定着されていく。 アンプを通したギターの音は途方もない速さで空中を駆け抜けていくが、小さな板の表面から ゆっくりとした丁寧さで放出されていくのは、耳では捉えられない、かといって目でも捉えきれない、とても重層的な想い出のつまったものなのだ。

奈良美智(美術家)

Comments from 品川亮(編集/ライター/映像制作)

考えてみると、われわれの日常は無数の「あれからの時間」で区切られている。 そしていつでも、「あれからの時間」は知らないうちに過ぎている。過ぎた時間はどこにいってしまったのだろう。あたりまえに考えれば、時間は揺るぎなく一定の 速度で流れているが人間の意識には揺らぎがあるので、ぼんやりしてると時間の流 れを見逃してしまうということなのだろうか。 でもほんとうは、時間の流れかたそのものに濃淡があるのかもしれない。これは 新しい考え方ではないし経験的にも腑に落ちる。2011年3月11日を境として、ハッキリと異なった濃度の時間が流れているのだから。 濃度がものすごく高まると、時間は高速で停止したような状態になる。無数の 「あれから」は消え失せ、ぎゅっとつまった「それからの時間」がじりじりどこま でも流れる。 富澤タクは、時間を見つけてはアトリエにこもり、ひたすらキャンバスに盛られ た画材を練り続けていた。指の先も手のひらもナイフも、ありとあらゆるものを使 って闇をこね上げた果てに、どこかこの世のものではないような、ゆらめく形象が 浮かび上がった。 キャンバスは深い闇に沈んでいる。だがその中に刻み込まれた色彩の濃淡は、わ れわれのイマジネーションを刺激しさまざまな形象を幻視させる。「それからの時間」が、彼の身体と意識を感光体として結像したものともいえるだろう。 それを見つめるということは、われわれの身体と意識を富澤タクの「それからの時間」に感光させるという行為にほかならない。そうすることによって、われわれの中の「それからの時間」を含む無数の「それからの時間」が多重露光のように混 淆し、まったく異なった「それからの時間」が生成される。それはまさしく、過去から未来にいたるまで全体の質を変えてしまうようなひとつの区切りが、われわれ の時間の中に導き入れられる瞬間である。 もしかすると、いつでもただひとつの「時間」しかなかったのかもしれない。 「あれからの時間」も「それからの時間」も「これからの時間」もなにもかも、すべてをのみ込むのではなくただ肯定しながら流れるひとつの「時間」があるとした らどうだろう。ようやく、そんな感覚が立ち上がりつつあることに気づく。 富澤タクのキャンバスが、真の闇に見えながら同時に鮮やかな色と形を立ち上がらせていたのは、感光体としての富澤があらかじめそのことを感じ取っていたからなのではないか。具象を超えた具象と呼びたくなる彼の作品からは今、そんなこと が感じられる。

品川亮(編集/ライター/映像制作)

  • 2017年7月8日(土) ~ 8月5日(土)
    会場:カフェリア 1F&2F (福島県いわき市平新川町54-2)
  • 2017年9月3日(日) ~ 10月2日(月)
    会場:サナギ インキュベーションギャラリー(新宿区新宿三丁目35番6号 甲州街道高架下)

プレスリリース

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